◆会員のみなさまへ、お知らせ◆
今回は昨年(2020年)の新型コロナ感染症が拡大し始めた頃のオークニーの様子です。
2020年6月25日発行「スコットランド便り 104号」より。
Orkney Now no.2
この回は、は本格的な観光シーズンが始まり活気あるオークニー諸島の風景をご紹介する予定でしたが、オークニー諸島も3月23日よりコロナウイルス蔓延防止の為の制限が始まり、残念ながら全てのイベントの中止が決定してしまいました。観光業が大きな収入源となる島にとっては大打撃です。
しかし、オークニー諸島の人々はロックダウン直前直後から実に前向きに、効率良く、コミュニティーが一丸となって困難に立ち向かい、助け合いの精神に満ち溢れています。

この島でコロナウイルスについて危機感が高まったのは3月10日頃からでした。
当初は高齢者及び概病歴の有る方が危険という情報が主流でしたので、割と大らかに構えていた人が殆どでした。OJAでは予定していたセミナーをロンドンとオークニー間でビデオ会議に変更して行い、テクノロジーの進化を身を持って感じました。この翌日に政府及び自治体から大人数での集会に規制が発表され、オークニーに立寄る予定の大型客船のスケジュールは全てキャンセルが決定。島にある大型スーパーでは大量買占めによるトイレットペーパー不足が発生するなど若干の混乱がありました。

一方、フェイスブックを通して、お年寄りや体の弱い方、また実際に症状が出て隔離生活をする人の買い物や必要な用事を代行する活動Orkney CV Mutual Aidを個人の方が設立し、ボランティアを募り、多くの島民が『積極的に手伝います』という意思表示を始めました。たった一人が起こした行動が多くの島民に、この非常事態に自分達が出来る事を積極的に行い、冷静に対応することの大切さを早い段階で気づかせてくれました。
地元のジンKirkjuvagrの製造元オークニー蒸留所も早々にジン蒸留行程を消毒スプレー製造に変更し、地元の病院等で働くキーワーカーの方々へ消毒スプレーを提供、一般向けにも消毒液の販売を開始しました。
また、世界遺産のスタンディング・ストーンズの近くに立つThe Standing Stones Hotelのオーナー家族が、3Dプリンターでフェイス・シールドを作成し、キーワーカーへの寄付を開始しました。
ジン蒸留所もホテルも一番の稼ぎ時を逃し、経営の大打撃を受けている状況の中でも、この島を守る為に何ができるのだろうと考え、迅速に行動を起こして下さった事に本当に頭が下がります。

23日のロックダウン発表から数日後には、島への渡航(飛行機及びフェリー)が規制され観光目的だけでなく、家族訪問すらも原則禁止となりました。この時本当の意味でロックダウンを実感して若干不安になりましたが、ソーシャルメディアの発達のおかげで、食料品や生活必需品の輸送は止まらないという情報は速やかにだされ、大きなパニックにはなりませんでした。
また、オークニー在住の作家のトム・ミュアさんを始めとする島に住む芸術家の方々はインターネット上でその才能を惜しみなく共有して下さり、学校に行けない子供達や大人達の心も救ってくれました。この島では職種に限らず、自ら積極的にコミュニティーに貢献されている人たちのことをローカル・ヒーローズと呼んでいます。

そして、人間たちの混乱とは対照的にオークニーの大自然は“通常どおり”の営みを送っています。5月末には一日の日照時間は18時間と長くなり、気温も晴れている日は日中18℃くらいまで上がり、過ごしやすくなっています。
5月に入り、島の象徴的な海鳥パフィンが子育ての為に沖から岸壁に引越してきています。2015年からホイ島にて巣作りの為に飛来している絶滅危惧種のオジロワシ(White Tailed Sea Eagle)は今年も無事飛来し、現在は二羽のひな鳥が確認されているそうです。オジロワシにとっては静かに子育てが出来る良い年かも知れません。
オークニーは『新しい通常(New norm) 』への移行期間もヴァイキング達の如く、知恵と勇気で乗り越えて行くでしょう!

次号はオークニーの美味しい物をご紹介致します。お楽しみに!
(OJA/ジョンストン・由香)
オークニー蒸溜所の人々
オークニー蒸溜所で製造する消毒用アルコール
ホテル制作のフェイスシールド
ホイ島のオジロワシ

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